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ファントム・オブ・パラダイス
DATA


原題:Phantom of the Paradise ……1974年
独り言
小生の持っているDVD裏面の紹介文に「『ロッキー・ホラー・ショー』と共にファンに愛され続ける ロック・ミュージカルの名作である。」とある。今から20年以上も前、東京に"名画座"と呼ばれる映 画館がたくさんあったころ、「ファントム・オブ・パラダイス」と「ロッキー・ホラー・ショー」は 2本立てで上映されることが多かった。「ロッキー・ホラー・ショー」という映画は噂には聞いていた が、「殺しのドレス」でデ・パルマに魅了されていた小生は「ファントム・オブ・パラダイス」見た さに映画館に行った。確か、池袋の文芸座だったと思う。館内は満員で、ほとんどが「ロッキー・ホラー・ショー」ファン。上映中に米粒が飛ぶは、英字新聞をかぶる人がいるは、ライターで火をとも すはで「ロッキー・ホラー・ショー」初体験で、しかも一人で見に行った小生は圧倒されてしまった が、同時にハマってもいたのだった。その後いくつかの映画館で2、3回同じ2本立てを見たが、十 数人の外人さんのいたときがあって、そのときの盛り上がりはものすごかった。登場人物のセリフを 一緒に叫んだり、雨の場面では水鉄砲でお互いに水をかけたり、立ち上がって踊ったりする人までい た。そんなことを友人に話したら、「ロッキー・ホラー・ショー」をぜひ見てみたいというので大塚 にあった映画館に4、5人で出かけていった。そのときも同じ2本立てだった。大塚という場所柄か らかそれほどの盛り上がりがなかったにもかかわらず、ほとんどの友人たちは「ロッキー・ホラー・ショー」のアクの強さについていけなかったようである。しかし、同時上映の「ファントム・オブ・ パラダイス」はみんなが気に入ってくれた。「ロッキー・ホラー・ショー」の後で見たためにドギツ さが緩和されたのかもしれない。その後、デ・パルマファンになった友人もいた。このように「ロッキー・ホラー・ショー」を見に行って「ファントム・オブ・パラダイス」を知ったという方も当時は 多かったのではないだろうか。「ロッキー・ホラー・ショー」の名前をDVDの紹介文に書いた方も、も しかしたらあのころ名画座で同じ2本立てを見ていたのだろうか。
シャワーシーン
デ・パルマがアルフレッド・ヒッチコックの大ファンであり、ヒッチコックの作品を自分の作品の下地にしたりしていることは有名だが、この作品では「サイコ」のシャワーシーンをアレンジして使っている。ロックの殿堂「パラダイス」のオープニング・ステージを数時間後に控え、気分を落ち着かせようとシャワーを浴びるビーフ(ゲリット・グラハム)。シャワーカーテンの向こうに右手を振り上げた黒い影が……。きゃあぁあぁぁ。ということで、後は見てのお楽しみ! ちなみにこの映画の後、「キャリー」「殺しのドレス」でもシャワーシーンが衝撃を与えてくれる。
ポール・ウィリアムス
実はすごい人である。カーペンターズの「雨の日と月曜日は」('71)「愛のプレリュード」('70)、 スリー・ドッグ・ナイトの「オールド・ファッションド・ラヴ・ソング」('71)を作り、バーブラ・ ストライサンドと「スター誕生」のテーマソング「スター誕生・愛のテーマ」('77)を作っている。 自らもレコードを数多く出しており、ヒット曲もあったようだ。もちろん、「ファントム・オブ・パ ラダイス」の曲も彼の作品。また、24歳のとき「ラヴド・ワン」という映画で、ロケットを組み立て る10歳の天才少年の役を演じている。「ファントム・オブ・パラダイス」ではレコード会社の社長兼 プロデューサーのスワンを演じているが、このとき彼は34歳。スワンと同じく年齢がよくわからない人である。
ところで、スワンの会社であるデス・レコードの廊下や、スワンが作った劇場「パラダイス」にある スワンの部屋の天井が異様に低いのは、背の低いスワンのコンプレックスからだろうか。
編集:ポール・ハーシュ
デ・パルマ作品は「ブルーマンハッタンT 哀愁の摩天楼(原題Hi,Mom! 日本では劇場未公開、邦題 はビデオ発売時のもの)」「悪魔のシスター」に次いで3作目だったが、「ファントム・オブ・パラダイス」での軽快なテンポの編集は作品の質を大きく高めていると思う。この作品での仕事振りを評価したジョージ・ルーカスは、ポール・ハーシュを「スター・ウォーズ」で起用した。「ファントム・オブ・パラダイス」の後、デ・パルマ作品では「愛のメモリー」「キャリー」「フューリー」「悪夢のファミリー(原題Home Movies 日本では劇場未公開、邦題はビデオ発売時のもの)」などでも編集を担 当している。
時限爆弾
劇場「パラダイス」に忍び込んだファントム(ウィリアム・フィンリー)は、ステージの袖でこれか らリハーサルの舞台に使う自動車のトランクに時限爆弾を仕掛ける。ここで画面は二つに割れ(スプ リット・スクリーン)、舞台袖からの視点と客席側からの視点と二つの視点で時限爆弾の仕掛けられ た自動車を見ていくことになる。いつ爆発するかというドキドキの場面にこのテクニックは非常に効 果的である。ただ、この時限爆弾というアイデア、実はオーソン・ウェルズ監督の「黒い罠」のオープニングで使われていた。しかも、爆発するまで自動車はかなりの時間街中を走り、それをカメラは ワンカットで追っていく。正直に言ってデ・パルマの負け。

予告編
     The Hell of It