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[ 映画への独り言 ]    [ ブライアン・デ・パルマ ]    [ アルフレッド・ヒッチコック ]    [ 男優 ]    [ 女優 ]    [ 監督 ]
今週の一本勝負
2006年1月〜6月


ドグマ
   Dogma
2006年6月28日  
監督:ケヴィン・スミス
主演:マット・デイモン
    ベン・アフレック
天国に戻ろうとする死の天使のロキ(マット・デイモン)と見張る天使のバートルビー(ベン・アフレック)を阻止する使命を授かった堕胎医のベサニー(リンダ・フィオレンティーナ)は、預言者?のジェイ(ジェイソン・ミューズ)とサイレント・ボブ(ケヴィン・スミス)とともに出発するが……。
カトリックの教会から非難を浴びた作品。キリストは黒人だったとか、キリストには兄弟がいたとか、危険な発言がいたるところにあるから仕方ないとは思うが、決してキリスト教の批判がテーマの作品ではない。あくまでも作品の題材となっているだけである(題材にするのがそもそもいけないのだと言われればそれまでだが)。鑑賞後、いい気分になれる作品になっている。
マット・デイモンとベン・アフレックより脇を固めている役者が光っていて面白いのも特徴。サルマ・ハエック(芸術の女神:セレンディビティ)、アラン・リックマン(大天使:メタトロン)、ジェイソン・リー(堕天使:アズラエル)そして、預言者の2人を演じたジェイソン・ミューズとケヴィン・スミス(監督でもある)! 特にケヴィン・スミスのサイレント・ボブはいいキャラクター。さらに、アラニス・モリセットがなんともいえない味を出している。彼女の存在がこの映画を支えているといっても過言ではないだろう。逆立ちするシーンは最高だった。


Mr.& Mrs.スミス
   Mr. & Mrs. Smith
2006年6月21日  
監督:ダグ・リーマン
主演:ブラッド・ピット
    アンジェリーナ・ジョリー

        
あるところにジョン(ブラッド・ピット)とジェーン(アンジェリーナ・ジョリー)のスミス夫妻が住んでいました。実はお互いに秘密を抱えていました。ある時、2人はそれぞれお互いの秘密を知ってしまいます。夫婦喧嘩が始まりました。初めは探りあいのような感じでしたが、次第にエスカレートしていきます。本気の喧嘩を経て2人の仲は以前よりよくなりました。ところがそんな2人を周囲の人々は認めませんでした。夫婦の危機です。2人は力を合わせて周囲の人々をねじ伏せてしまいました。
倦怠期を迎えたある夫婦が大喧嘩を経て仲直りしたことを、異様な設定で描いたアクション・コメディとでも言えばよいだろうか。楽に見られる作品なのかもしれないが、よく考えてみると、主人公の2人は金で動く殺し屋で、血も涙もない人間である。また、自分たちが幸せになるために何人もの命を犠牲にしてしまう。昔の作品だったら同じようなストーリーでも登場人物を1人も死なせずに作ったのではないだろうか。終盤、“明日に向って撃て!”を意識したようなシーンがあるが感動の結末には程遠い仕上がりである。
エディ役のヴィンス・ヴォーンはいい役者になったと思う(ガス・ヴァン・サントの“サイコ”のノーマン・ベイツ役のときはいただけなかった)。“ビー・クール”での演技もよかった。


ビー・クール
   Be Cool
2006年6月14日  
監督:F・ゲイリー・グレイ
主演:ジョン・トラヴォルタ
    ユマ・サーマン
        
目の前で射殺された友人の妻イーディ(ユマ・サーマン)を助けようと、友人が経営していた音楽製作会社の仕事を手伝う決心をしたチリ・パーマー(ジョン・トラヴォルタ)は、有望な新人リンダ・ムーア(クリスティナ・ミリアン)を見つける。しかし、リンダはライバル会社と契約していた。もと取り立て屋のチリの大胆な作戦が展開されていくが……。
ジョン・トラヴォルタは派手な演技をしないで存在感を出したいのだろうが、まだそんなレベルの役者にはなりきれていない。相手に対しニヤリと笑ってみても、ニヒルな笑いと言うよりもニヤけた笑いと言った方がふさわしい顔になってしまう。コメディだからいいけれどシリアスには似合わない役者になってしまったような気が……。
スティーヴン・タイラーが出てきてまさかと思っていたら、クリスティナ・ミリアンをフューチャーしたコンサートのシーンでエアロスミスが1曲をフルに演ってくれた。ステージ上ではパワフルなスティーヴン・タイラーもさすがに顔は老けてしまった。口の両端のたるみがものすごい。大きな口だから余計なのだろうか? そういえばキッスのジーン・シモンズも授賞式の場面に出ていた。


ブラザーズ・グリム
   The Brothers Grimm
2006年6月7日  
監督:テリー・ギリアム
主演:マット・デイモン
    ヒース・レジャー
        
ドイツの村々の伝説にあわせて自分たちで怪奇現象を演出し、自分たちで解決して大金を稼いでいたウィル(マット・デイモン)とジェイコブ(ヒース・レジャー)のグリム兄弟は、本物の鏡の女王(モニカ・ベルッチ)と対決することになってしまうが……。
ファンタジーの世界にテリー・ギリアムらしい残酷さを少しだけ加えた冒険活劇。テリー・ギリアムらしさがあまりなく、期待はずれという感じが否めない。未来モノではないので建造物などのデザインがおとなしめだし、グリム兄弟も結局は素直でいい人、あまり魅力を感じない。とても現実的で行動的なウィルとお伽話の世界に生きるジェイコブという対照的な2人の設定はうまいと思うが、クライマックスでジェイコブの活躍が目立ってしまうのはどうだろう。さらに、とっても怪しい雰囲気を出していたカヴァルディ(ピーター・ストーメア)までいい人になっちゃって……。
ところで、サシャがさらわれる場面に登場するジンジャー・ブレッド・マンの誕生の仕方は、宮崎駿に影響を受けたかな?


モディリアーニ 真実の愛
   Modigliani
2006年5月31日  
監督:ミック・デイヴィス
主演:アンディ・ガルシア
    エルザ・ジルベルスタイン
        
ピカソ(オミッド・ジャリリ)に対し異常なまでに対抗心を持つモディリアーニ(アンディ・ガルシア)の破天荒な生涯を描いた作品。
世間に認められなくて悲惨な生涯を送ることになる芸術家を主人公にした作品はよくあるが、その中でこの作品はよくできている方だと思う。アンディ・ガルシアがうまい。今まで、悪役をやらせたら天下一品と勝手に思っていたが、こういう役もうまくこなすのだなあとちょっと感心した。また、ピカソ、ユトリロ、ディエロ・リベラなどの周りの個性的な登場人物に存在感があり作品をしっかりと支えている。画家たちがコンテストに向けてそれぞれの作品を製作しているシーンなど盛り上がる部分もかなりあった。ただ、ピカソがモディリアーニのことをどの程度脅威に感じていたのか、モディリアーニを画家仲間としてどこまで認めていたのかなどが、描ききれていないように思える。エピソードを通じて理解してもらおうという意図はわかるが、もう少し親切に伝えてくれてもよかったのではないだろうか。
ところで、副題の“真実の愛”はいらないと思う。こういう副題で引いてしまう作品がとっても多いのだが……。


ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア
   Knockin' on Heaven's Door
2006年5月24日  
監督:トーマス・ヤーン
主演:ティル・シュヴァイガー
    ヤン・ヨーゼフ・リーファース
        
病院で知り合った脳腫瘍のマーチン・ブレスト(ティル・シュヴァイガー)と骨肉腫のルディ・ウルリツァー(ヤン・ヨーゼフ・リーファース)は、死ぬ前に海を見ようと、酔った勢いで車を盗んで出発する。ところがその車はギャングのもので、100万マルク入りのカバンがトランクに入っていた。ギャングと警察に追われることになってしまった2人だが……。
死を悟った人間だからこそできる大胆な行動が楽しく展開され、マーチンとルディを追うギャングと警察の間抜けさもうまく描かれている。銀行強盗のシーンやホテルからの脱出シーンは爆笑ものだし、派手な銃撃戦もあって飽きさせない。また、2人の友情の深まりをマーチンの発作(伏線にもなっている)をうまく使って見せている。追われる者がどうなってしまうのかというサスペンス的な要素はあまりなく、2人の行動を楽しく見ることができる。しかし、2人の心の中には死の恐怖が確実に存在している。最後のセリフが印象的だった。


キャッチ22
   Catch-22
2006年5月17日  
監督:マイク・ニコルズ
主演:アラン・アーキン
    マーティン・バルサム
        
第二次大戦中、イタリアの米軍基地に配属されていたヨサリアン(アラン・アーキン)の目から見た戦争の不条理と人間の愚かさを描いた作品。黒煙をあげながら帰還した戦闘機が爆発炎上している脇で商売の話をしている上官と部下という冒頭のシーンからかなりブラックである。
戦闘機が離陸する場面では、滑走路を走る戦闘機を前から撮影したりして迫力満点だし、夜間の基地への空爆の場面も派手に炎を舞い上げさせてスケールがでかい。反戦がテーマのブラックコメディにこれだけ金をかけるのかと感心してしまう。キャストも豪華で、マーティン・バルサム、アンソニー・パーキンス、オーソン・ウェルズ、ジョン・ヴォイト、アート・ガーファンクル、マーティン・シーンなどすごい顔ぶれ。ちなみに、アート・ガーファンクルがこの作品に出演したことが、サイモンとガーファンクルの解散のきっかけとなったというのは有名な話。
下ネタもあったりして、“地獄の黙示録”のようにシリアスな作品ではないが、テーマには似たところがある。肩の力を抜いて見られるのだが、見終わった後でいろいろなことを考えさせてくれる作品である。


チャーリーとチョコレート工場
   Charlie and the Chocolate Factory
2006年5月12日  
監督:ティム・バートン
主演:ジョニー・デップ
    フレディ・ハイモア
        
家の屋根には穴が開いていて誕生日のプレゼントが板チョコ1枚という貧しい家庭に育ったチャーリー(フレディ・ハイモア)は、ウィリー・ウォンカ(ジョニー・デップ)のチョコレート工場に他の4人の子どもたちと一緒に招待される。工場内はテーマ・パークのようで、チャーリーにとってはすばらしい世界だったが、他の子どもたちは1人ずつひどい目にあっていく。ウィリー・ウォンカにはある計画があったのである。その計画とは……。
ミステリファンには“あなたに似た人”で有名なロアルド・ダール(妻は女優のパトリシア・ニール)が、子どもを寝かせるために語り聞かせた即興の童話が元になったという“チョコレート工場の秘密”が原作。もともとファンタジックなストーリーをティム・バートンが自分の料理法でうまく展開させている。ブラックな部分ももちろん随所に見られる。そして、ジョニー・デップが、独創的ですばらしいアイディアの持ち主だが人を信じられないウィリー・ウォンカを怪演している。何をやらせてもうまくこなす役者である。
また、いかにもティム・バートンらしいのが、テーマ・パークのような工場内の描写と、それに対してとっても対照的な雪景色の街。そして街はずれにある傾いたチャーリーの家。ウィリー・ウォンカはティム・バートン自身ではないだろうか。


シビル・アクション
   A Civil Action
2006年5月5日  
監督:スティーヴン・ザイリアン
主演:ジョン・トラヴォルタ
    ロバート・デュバル
        
金になる訴訟しか担当しないが人気は抜群で、ラジオ番組にも出演している弁護士のジャン(ジョン・トラヴォルタ)は、大企業がバックについている製革会社を相手取り公害の訴訟を起こす。最初はいつものように金目当てだったのだが、詳細な調査を続けるうちに自分の財産をつぎ込むまでになってしまう。果たして裁判の行方は?
仕事をそつなくこなし実績もある若手弁護士が主人公。それまで金で動いていた男が、正義感に目覚めるというカッコいいストーリーだが、法廷内のシーンはもとより、製革会社周辺の美しい自然が描かれたシーンにも重苦しさが充満している。さらに敵役のロバート・デュヴァルがすばらしく、見ている者を安心させてくれない。スリリングではあるが、いつになっても危機的状況から抜け出せない展開で息が詰まる。1年後に作られた“エリン・ブロコビッチ”は、生活のために弁護士事務所で働くちょっと間抜けな女性を主人公にして、似たようなストーリーを痛快な仕上がりにした。鑑賞後の気分はいいに越したことはない。
ところで、ジェームズ役のウィリアム・H・メイシーは福田康夫元官房長官に似てると思いません?


ゆりかごを揺らす手
   The Hand that Rocks the Cradle
2006年4月26日  
監督:カーティス・ハンソン
主演:アナベラ・シオラ
    レベッカ・デ・モーネイ
        
ペイトン(レベッカ・デ・モーネイ)の夫(ジョン・デ・ランシー)は産婦人科医だったが、猥褻行為で訴えられ自殺してしまう。そのショックで子どもを無事に出産することができなかったベイトンは、最初に訴えを起こそうとしたクレア(アナベラ・シオラ)とマイケル(マット・マッコイ)の家族への復讐を決意し、乳母として家庭に入り込む。そして……。
最初から犯人がわかっている倒叙ミステリ・サスペンス。したがって犯人探しの面白さがないのだが、あまり退屈せずに最後まで見てしまう。知的障害のあるソロモン(アーニー・ハドソン)が後に活躍するだろうことは見え見えだし、温室での殺人は指紋を調べないのかというような細かい部分で納得できないところがあり、脚本が良くできているとはけっして言えない。レベッカ・デ・モーネイの演技だけで見せているとも思えない。人を不幸にしてみたいという人間の残酷さが原因?


ザ・ドライバー
   The Driver
2006年4月19日  
監督:ウォルター・ヒル
主演:ライアン・オニール
    イザベル・アジャーニ
        
犯罪者が現場から逃走するときの運転手を家業としている男(ライアン・オニール)と、この男に賭けた女(イザベル・アジャーニ)、そして男を追う刑事(ブルース・ダーン)の物語。
エンド・クレジットにも「The Driver、The Detective、The Player」などと書かれているように、登場人物の名が一切なく、非常にクールな目線で描かれた作品。登場人物たちが自らの感情を語ることも最小限に抑えている。特にイザベル・アジャーニは典型的な黙っていて絵になる女として独特の雰囲気を醸し出している。これぞハードボイルドといった感じである。さらにカーチェイスが凄まじい。特に屋内駐車場で赤いベンツの運転をする場面は、駐車場内に響き渡るエンジン音がよりいっそうの効果をあげていてすばらしい。そして、そのベンツを少しずつ壊していくところはなんとも痛快。
ストーリー展開は比較的単純で物足りないくらいだが、最近ではストーリーを複雑にしすぎて自滅しているような作品もあるので、こういうタイプのもの(ちなみにこの作品は1978年のもの)は逆に完成度が高く思える。


12 モンキーズ
   Twelve Monkeys
2006年4月12日  
監督:テリー・ギリアム
主演:ブルース・ウィリス
    マデリーン・ストウ
        
細菌により50億人が死滅した原因を探るため、過去の時代に送り込まれた囚人のジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)は少しずつ核心に近づいていく。
ブルース・ウィリスの灰汁の強さが鼻についてしまうことを除けば、とてもよくできた作品と言ってよいだろう。未来の最新鋭の機械がどこかレトロっぽかったり、チューブやケーブルがやたらと多かったり、蒸気がいたるところから噴出していたりと、テリー・ギリアム独特の世界をバックに、これでもかと言うように伏線を張り巡らしたストーリが展開する。キャサリン・ライリー博士(マデリーン・ストウ)の講演会には真犯人が来ているし、映画館の中でヒッチコックの“めまい”を見ながらキャサリンは「起こったことは変えられない。“あとの祭り”」と言う。“めまい”のジェイムズ・スチュアートとキム・ノヴァクのセリフも見事な暗示を与えている。その直後の映画館のロビーのシーンが思いっきりヒッチコックを意識してるのはちょっとやりすぎのように思えるが……。さらに、ラストの空港のシーンも“北北西に進路を取れ”を思わせる。
見終わってスカッとするタイプの作品ではないが、2度見ても新たな発見をして楽しめる。


殺人ゲームへの招待
   Clue
2006年4月5日  
監督:ジョナサン・リン
主演:アイリーン・ブレナン
    ティム・カリー
        
面識のない7人が大きな屋敷の晩餐に招待された。そこで殺人が次々に起こっていく。犯人はいったい誰? そして目的は?
アガサ・クリスティの“そして誰もいなくなった”と同じような設定で起こる殺人事件をコミカルに描いた、“名探偵登場”を思わせる作品。出来事はすべて屋敷の中で起こるので犯人探しをしたくなる。しかも、“名探偵登場”のようにパロディではない。そこがいけない。DVDでは結末が3つも用意されていて、3つとも犯人が違うのである。ということは、見ながら犯人を推理することはできないということになる。“名探偵登場”は、犯人を推理することができない推理小説を批判する作品でもあったが、この作品の場合にはそんな考えはこれっぽっちも見えず、ただ話をこねくり回しているだけ。思わせぶりな展開で観客を振り回しておいて、答えは何通りも考えられますというのでは納得できない。
それでも、役者たちは個性的で面白い。“ロッキー・ホラー・ショー”のティム・カリーは怪しい執事をコミカルに演じていたし(どうしてもフランクン・フルターらしさを探してしまうのだが)、メル・ブルックスの“新サイコ”や“ヤング・フランケンシュタイン”のマデリン・カーンもイイ感じだった。


海の上のピアニスト
   La Leggenda del Pianista Sull'Oceano
2006年3月29日  
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
主演:ティム・ロス
    プルート・テイラー・ヴィンス
        
欧米航路の客船のピアノの上に捨てられていた赤ん坊は、その船の石炭焚きダニー(ビル・ナン)に拾われ、ダニー・ブードマン・T.D.レモン・ナインティーン・ハンドレッドと名付けられる。そして、船の上で育てられる。船の楽団のピアニストとなったナインティーン・ハンドレッド(ティム・ロス)は一度も船から降りることがなかった。
主役がいわゆるイイ男ではなく、演技派のティム・ロスであることがこの作品のすばらしい点。特殊な境遇(船の上で生まれ育ったため戸籍がなく地上に存在していない男)でしかもピアニストという主人公を見事に演じている。というよりもあの顔が妙にマッチしていたと言ったほうが正しいだろうか。
ナインティーン・ハンドレッドは船の中で出会った男から「海の叫びを聞いた」と聞き、自分もその叫びを聞きたいと思うが聞こえてこない。海の上では聞こえないのかと、船を降りようともする。ナインティーン・ハンドレッドにとって海はとても大きな存在であるはずなのに、作品を通して海の印象が薄い。晴れの日も雨の日も描かれているのに、見終わった後でなかなか海を思い浮かべることができなかった。船内をうまく撮っているだけにちょっと残念。


デッドマン・ウォーキング
   Dead Man Walking
2006年3月22日  
監督:ティム・ロビンス
主演:スーザン・サランドン
    ショーン・ペン
        
死刑囚であるマシュー(ショーン・ペン)と、マシューを死刑から救おうとするシスター・ヘレン(スーザン・サランドン)の物語。
オープニングの曲が最高にすばらしい。見せてくれる凝ったオープニングは多いが、久しぶりの聞かせてくれるオープニングという感じだった(といっても1995年の作品なので、本当に個人的な見解でしかないのだけれど……)。オープニングの音楽は作品のイメージを決定付けてしまうこともあり、非常に重要な役割を担っている。車を運転して刑務所へ向かうシスター・ヘレンとそれまでの経緯、さらに教会の映像を織り交ぜたオープニングは、それだけでも独特の良さがある。そこにこれ以上のものはないというくらいの曲が流れている。惹きつけられた。 シスター・ヘレンはマシューとの面会を重ねると同時にマシューの家族、被害者の家族とも会い、さまざまな考え方に触れていく。刑務所内のマシューも善人としては描かれない。死刑というものが良いのか悪いのか、答えの出る問題でないのはもちろんだが、死刑は良くないものだと安易に思わせないようにしている。それは1人死刑囚の側からだけで描くのが危険だという計算からではなく、シスター・ヘレンの立場をより複雑なものにしてドラマ性を持たせたいからだと思いたい。この作品のテーマと主人公の女性をほんの少し軽くすると、“エリン・ブロコビッチ”になるはずである。
シスター・へレンが初めて刑務所内に入るとき、金属探知機に反応したのが十字架のネックレスだったというところはオープニングの次に好きな場面。
そういえばスーザン・サランドンはトリノ五輪の開会式でオリンピック旗を持っていたっけ。


ロング・エンゲージメント
   Un Long Dimanche de Fiancailles
2006年3月15日  
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
主演:オドレイ・トトゥ
    ギャスパー・ウリエル
        
第一次世界大戦中、フランス軍の兵士として出征したマチルド(オドレイ・トトゥ)の恋人マネク(ギャスパー・ウリエル)は戦争が終わっても帰ってこなかった。マチルドはマネクを捜し出そうとして東奔西走するが……。
マネクのことを知っていると思われる人物を調べていく中で、同じ出来事でも見ていた者によって異なって捉えられていたことがわかってくる。その展開はスリリングである。ただ、観客に与えられる情報がわかりにくいため、謎解きの面白さは半減してしまう。また、見ながら黒澤明の“羅生門”を思い出していたのだが、“羅生門”ほどの深みは感じられなかった。
1人の女性が主人公で、“アメリ”のジャン=ピエール・ジュネ監督とオドレイ・トトゥのコンビということもあり、多少“アメリ”を意識したのか、「車より先に行ければマネクは生きて帰ってくる」と思いながら必死で走ったりするマチルドの性格はアメリに近いものがある。猫も出てくる。しかし、戦争が題材になっていることと、マネクの置かれた状況に大きなテーマを持たせすぎたために、全体のバランスが崩れているような気がする。“アメリ”の世界を期待してみると裏切られるし、戦争に翻弄される人間を描いたものとしては少し物足りない。あれもこれもと欲張りすぎたのか、“アメリ”を引きずりすぎたのか、いずれにしてもちょっと残念な作品。十分面白いのだが、面白いだけに注文をつけたくなる。


アメリ
   Le Fabuleux Destin D'Amelie Poulain
2006年3月8日  
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
主演:オドレイ・トトゥ
    マシュー・カソヴィッツ
        
医者である父により心臓病と誤診され学校へ行かずに育ったアメリ(オドレイ・トトゥ)は、自分の殻に閉じこもってしまう。家を出て一人暮らしを始めても相変わらずのアメリだったが、借りている部屋で40年前の住人の宝物を見つけたことをきっかけに少しずつ変わっていく。そして、自分と同じ匂いのする男性ニノ(マシュー・カソヴィッツ)に出会い……。
ユーモアたっぷりに描かれた一人の女性の物語。脚本がしっかりしているし、映像も適度に凝っていて、娯楽作品として非常によくできた作品。ユーモアもふんだんに盛り込まれている。「日曜日は働かないんだ」と言ってお金を受け取らないホームレス、金魚の身投げやドワーフ(7人の小人の人形)の世界旅行など、一味違った笑いを提供してくれる。そして、それらが伏線になっていたりして、ストーリー展開に役立っている。綿密に練られた脚本だと思う。女性のための作品のように言われたことで、男性が敬遠していたとしたら残念。人によっては入り込めない世界かもしれないけれど。
アメリという癖のある主人公を場面によってはコミカルに、場面によっては美しくと撮りわけたところも見事。監督は、オードリー・ヘップバーンをかなり意識したのではないか。アメリの髪型や運河で石を投げる場面の横顔などはヘップバーンを思わせるし、ラストシーンは“ローマの休日”のあの名場面そのもの。


フォーン・ブース
   Phone Booth
2006年3月1日  
監督:ジョエル・シュマッカー
主演:コリン・ファレル
    キーファー・サザーランド
        
ケリー(ラダ・ミッチェル)という妻がありながら、田舎から出てきた若い女性パム(ケイティ・ホルムズ)をモノにしようとしている軽薄な広告マンのスチュ(コリン・ファレル)は、携帯に履歴が残らないようにいつも同じ公衆電話からパムに電話していた。ところがある日、その公衆電話に電話がかかってくる。つい受話器をとってしまったスチュに、その電話の主(キーファー・サザーランド)は自分がライフルでスチュに狙いを定めていることを告げる。電話の主の目的は? スチュの運命は?
主演のコリン・ファレルが作品のほとんどのシーンを電話ボックスの中で演じるというちょっと変わったサスペンス。電話ボックス以外の場所がほとんど出てこない作品なのだが、飽きさせない。サスペンスには派手なアクションがなくてもよいと改めて感じた。ただ、派手なシーンが少ないと脚本と撮り方と役者の演技力が重要になるはず。この作品は脚本をもっと練れたのではないか。犯人はこれまでにも狙撃をしたらしいが、そのときの理由と比べるとなんとも弱い。また、終盤のスチュの告白はいただけない。なんでこんなにまで善人になってしまうのだろうか。さらに、ラストがすっきりしない。ちょっと後味が悪い。脚本の細かい部分で、主人公がずっと電話ボックスの中という設定の面白さをもっと活かせたのでは? メイキングで撮影期間が短かったことを得意げに言っていたが、もっとじっくりと作ってほしかった。


靴に恋して
   Piedras
2006年2月22日  
監督:ラモン・サラサール
主演:ナイワ・ニムリ
    アントニア・サン・フアン
スニーカーを履く女・アニータ(モニカ・セルベラ)、小さな靴を履く女・イザベル(アンヘラ・モリーナ)、偏平足の女・アデラ(アントニア・サン・フアン)、盗んだ靴を履く女・レイレ(ナイワ・ニムリ)、スリッパを履く女・マリカルメン(ビッキー・ペニャ)という、5人の個性あふれる女性の日常を描いたヒューマンドラマ。
別々に描かれていた5人の生活が徐々にシンクロしていく。今までにもこのような作り方の作品はたくさんあるが、この脚本はよくできている。女性たちは、夫についての悩み、知的障害を持つ娘についての悩み、恋人についての悩み、死んだ夫が残した連れ子についての悩みと、みなそれぞれの悩みを抱えていて、それらの悩みはお互いが関係していくにつれて解消されていく。そのもっていき方がそれぞれおもしろい。また、この作品には人間を温かく見守る目が感じられる。
それぞれの女性が履いているものは、きっと何かを象徴しているのだろうが、そこまでは理解することができなかったのがちょっと残念。


ネバーランド
   Finding Neverland
2006年2月15日  
監督:マーク・フォースター
主演:ジョニー・デップ
    ケイト・ウィンスレット
最近の作品で精彩を欠いていた劇作家のジェームズ・マシュー・バリ(ジョニー・デップ)は、公園で未亡人のシルヴィア・ルウェリン・デイヴィズ(ケイト・ウィンスレット)と彼女の4人の息子に出会う。デイヴィス家と親しくなったジェームズは子どもたちとの体験をもとに新作の執筆に取りかかるが、デイヴィス家に入り浸ることで妻メアリー(ラダ・ミッチェル)との仲は険悪なものになっていく。ジェームズの選択は?
「ピーターパン」執筆の舞台裏をロマンチックに描いた作品。何をやらせてもちょっと暗めな自分の世界にしてしまうジョニー・デップと、子役たち(特にピーター役のフレディ・ハイモア)、そしてシルヴィアの母親デュ・モーリエ夫人を演じたジュリー・クリスティがすばらしい。ケイト・ウィンスレットは嫌いではないけれど、病弱な女性のイメージを感じられなかったところが不満。ふくよかで健康的な女性に見えた。
ところどころに現れるイギリスの風景はとても美しい。そして、その美しい風景は室内劇の「ピーターパン」と対照的で、開放感を与えてくれる。


カマキリな女
   La Hija Del Canibal
2006年2月8日  
監督:アントニオ・セラーノ
主演:セシリア・ロス
    カルロス・アルヴァレス=ノヴォア
ルシア(セシリア・ロス)と夫のラモン(ホセ・エリアス・モレノ)は、新年をコパカバーナで迎える予定だったが、空港でラモンが行方不明になってしまい、ルシアは一人でマンションに帰ってくる。マンションの下の階に住んでいるフェリックス(カルロス・アルヴァレス=ノヴォア)や上の階に住んでいるアドリアン(クノ・ベチェール)と知り合いになり、誘拐されたらしいラモンの捜索を開始するのだが……。
事件に巻き込まれてしまう女性が主人公のサスペンスタッチの作品。シーンとシーンとのつなぎ目やカメラ・アングルなどにこだわりが感じられ(ちょっと凝りすぎの感もあるが)、見ていて楽しい。本当はもっと長い作品だったものを無理やり短くしてしまったように思えてしまうところがあって、ストーリー展開には少し不満が残るけれども、ラストにちょっとしたオチが用意されていたりして(写真に注目!)、楽しませようという作り手の気持ちが十分に伝わってくる。また、ルシア役のセシリア・ロスがすばらしい。実はこの人目当てで見た作品なのだが、期待をはるかに上回ってくれた。
ところで、この作品、邦題がものすごくイメージを悪くしているように思う。日本では中年過ぎの女性が主人公の作品は売れないかもしれないから、こんな題名にしているのか……?


素肌の涙
   The War Zone
2006年2月1日  
監督:ティム・ロス
主演:ララ・ベルモント
    フレディ・カンリフ
思春期のトム(フレディ・カンリフ)は、ある日父親(レイ・ウィンストン)と姉(ララ・ベルモント)の関係に気づいてしまう。しかし、母(ティルダ・スウィントン)は全く気づいていない様子。一人で悩んだ挙句、姉を問い詰めてみるが……。
“神に選ばれし無敵の男”“パルプ・フィクション”などで知られる役者ティム・ロスの初監督作品。近親相姦を題材にした全体的に暗いトーンの作品だが、テーマは思春期の少年の複雑に揺れる心理である。ほとんど語らないトムの悩みが、ニキビ面の表情からじんわりと伝わってくる。さらに、この作品のすばらしさはそのロケーション。イギリスの海辺の田舎町の風景が作品の重苦しい雰囲気を見事に作り出している。曇り空か雨の日がほとんどで、しかも風が強い。特に海岸のシーンは美しくもの悲しい。イギリス生まれのティム・ロスだからこそ撮れる映像かもしれない。
姉のジェシーを演じたララ・ベルモントはこの作品で初めて見たが、いい役者だと思う。ところで、ティルダ・スウィントンのお腹は本物だろうか?


17歳のカルテ
   Girl, Interrupted
2006年1月25日  
監督:ジェームズ・マンゴールド
主演:ウィノナ・ライダー
    アンジェリーナ・ジョリー

  
アスピリンを1瓶飲んで自殺を図ったスザンナ(ウィノナ・ライダー)は精神療養施設クレイモアに入れられる。そこで他の患者たちとの交流を通して自分を見つめ直していくというストーリー。
リサ役のアンジェリーナ・ジョリーがとにかくすばらしい。目で表現できているところがいい。クレイモアの患者たちのボス的な存在で、感情の赴くままに行動する“カッコーの巣の上で”のジャック・ニコルソンを思わせる役柄だが、狂気を演じるというよりちょっと個性の強すぎる女の子たちの姐御という感じ。深夜、部屋を抜け出して地下室?でボーリングをさせたり(自分は見てるだけ)、スーザンが訪ねてきた恋人と2人っきりで部屋にいるところに看護師が入っていかないように邪魔をしたりして、ものすごくいいヤツになるかと思えば、とても冷酷な女になったりもする。
スザンナには打ち破りたくても打ち破れない殻があるのに対して、リサは自分を抑制するものをすべて壊していく。スザンナはリサに共感を覚えたりもしたのだが、リサの行動はクレイモアという安全な檻の中にいるからこそできることなのだと気づいていく。“カッコーの巣の上で”が強烈な社会批判をテーマにした作品であるのに対し、この作品は一人の人間の成長を綴ったものである。ラスト近くの「一年を無駄にした」というセリフが印象的だった。
ちなみに、デイジー役のブリタニー・マーフィーは“8mile”のヒロインを演じた人。印象があまりにも違うので驚いた。また、60年代が舞台で、ジェファーソン・エアプレイン、ザ・バンド、ドアーズなどの曲がとっても効果的に使われている。


オペレッタ狸御殿
   
2006年1月18日  
監督:鈴木清順
主演:チャン・ツィー
    オダギリ・ジョー
世界で一番美しい安土桃山(平幹二郎)は、自分の美しさが息子の雨千代(オダギリ・ジョー)に抜かれてしまうことを恐れ、雨千代を亡き者にしようと刺客を送る。一方雨千代は森で出会った狸姫(チャン・ツィー)に恋をしてしまう。雨千代の運命は、狸姫との恋は成就するのか?
鈴木清順らしさは随所にあり、視覚的には楽しめる作品といえるかもしれないが……(もしかしたら、それも美術の木村威夫のおかげ?)。何で、こんなストーリーを撮らなくちゃいけないんだ? 何でデジタル処理をしてまで美空ひばりを出さなきゃいけないんだ? これが清順のやりたいことだったの? 日活時代は添え物作品と分類されるようなものを制限のある中で作って素晴らしいものを残した。わけのわからない作品を撮るということで日活を辞めさせられたが、パワフルで斬新で面白かった。年をとるとみんなこんな作風になっちゃうのだろうか? 黒澤明の“夢”もかつての力強い作風からノスタルジーが中心になってしまったと寂しい感じがした。清順のこの作品も同じように感じられた。
光っていたのは市川実和子くらいだろうか。けっしてうまくはないけれど……。


ミリオンダラー・ベイビー
   Million Dollar Baby
2006年1月11日  
監督:クリント・イーストウッド
主演:クリント・イーストウッド
    ヒラリー・スワンク
フランキー(クリント・イーストウッド)のジムにはタイトルを狙えるボクサーがいたが、タイトル戦へのゴーサインをなかなか出さないフランキーに不満を持ち他のジムに移ってしまった。そんなフランキーのもとへ31歳のマギー(ヒラリー・スワンク)が現れる。彼女のひたむきさに打たれたフランキーはトレーナーとなり、マギーは快進撃を続けていくが……。
クリント・イーストウッドがシブーく作った作品。でも、テーマは何なのだろう? と考えてしまう。それまでの人生において栄光を勝ち取れなかったフランキーとスクラップ(モーガン・フリーマン)の自己満足がかっこよく描かれているが、家族も救いにはならなかったマギーの絶望はあんな終わらせ方にしてしまってよいのか?
マギーが家族に会いに行った帰りのガソリンスタンドで、車内で落ち込んでいるマギーを、濡れているフロントガラス越しに撮るシーンや、これでもかとばかりに陰影をつけた夜のシーンなど素晴らしい場面は随所にあるが、とにかくストーリーが……。
ヒラリー・スワンクは“ボーイズ・ドント・クライ”で好きになった女優。いい笑顔をする女優だと思う。


エターナル・サンシャイン
   Eternal Sunshine of The Spotress Mind
2006年1月3日  
監督:ミシェル・ゴンドリー
主演:ジム・キャリー
    ケイト・ウィンスレット
        
恋人のクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)が自分に関する記憶を消してしまったことを知ったジョエル(ジム・キャリー)は、自分もクレメンタインの記憶を消すことを決心する。しかし、記憶を消されていく中で、本当は消したくないことを思い知らされ抵抗を試みるが……。
最近のアカデミー賞には納得いかないものがかなりあるけれど、この作品の脚本賞はうなずける。大きな枠で括ればラブ・ストーリーだが、いろいろなところに伏線がちりばめられたサスペンス風の構成になっていて楽しめる。時間の前後がわかりにくいストーリーを判断させるために、クレメンタインの髪の色を青・緑・オレンジと変えていくアイディアもよい。ジム・キャリー、ケイト・ウィンスレット、キルスティン・ダンストというキャストだったために、あまり期待しないで見たことを差し引いても、十分に面白い作品だった。映像も凝っていて、ジョエルの消されていく記憶の場面にはよいシーンがたくさんある(やりすぎのところもあるが)。特に、ジョエルがクレメンタインを追いかけていくシーンで、クレメンタインの後姿が画面の右にフレームアウトした後でカメラが左にパンすると、さっきまで右側にあったものがそのまま左右対称となって画面左側に現れ、今度はクレメンタインの後姿が左にフレームアウトしていくというところは、うまく作ってあると感心した。


映画への独り言