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[ 映画への独り言 ]    [ ブライアン・デ・パルマ ]    [ アルフレッド・ヒッチコック ]    [ 男優 ]    [ 女優 ]    [ 監督 ]
今週の一本勝負
2007年1月〜6月


プラダを着た悪魔
   The Devil Wears Prada
2007年6月25日 
監督:デヴィッド・フランケル
主演:メリル・ストリープ
    アン・ハサウェイ

        
        
ジャーナリストを夢見るアンディ(アン・ハサウェイ)は、ファッション誌「Runway」の編集長ミランダ(メリル・ストリープ)の第2アシスタントの職を得る。ファッションに無縁だったアンディは着ているものを同僚たちから馬鹿にされ、ミランダからの無謀とも言える命令に翻弄される。生活は仕事一色に染まり私生活は滅茶苦茶。いろいろな人の助けを借りて何とか乗り切っていくのだが……。
誰もが先を予想できるようなとてもベタな展開で気楽に楽しめる娯楽作品。アン・ハサウェイのファンは彼女が着こなすさまざまな衣装でも楽しめる。とにかく肩が凝らず、安心して見ていられる。それは脇を固めた役者がうまかったからだろう。第1アシスタントのエミリーを演じたエミリー・ブラントは、温かみがあまり感じられない職場の中で、ドレスを着るためにダイエットしたり、風邪でふらふらになったりするとても人間くさい役をうまく演じていた。そして、さすがと唸ったのはメリル・ストリープ。決して派手な演技はしていないのに、ミランダという女性の感情を生き生きと表現していた。いわゆる敵役だが、最後には優しさを見せるのだろうということは誰にも想像できる。それは、ミランダのアンディに対する表情や言葉の調子の変化などからさりげなく伝わってくる。ストーリーが進むにつれて少しずつミランダを変化させているのである。しかもビミョウに。
アンディが去った後で記者に囲まれたミランダの見せた表情の変化は特にすばらしかった。


レザボアドッグス
   Reservoir Dogs
2007年6月18日 
監督:クエンティン・タランティーノ
主演:ハーヴェイ・カイテル
    ティム・ロス

        
        
ジョー(ローレンス・ティアニー)が計画した宝石強盗のメンバーとして、それまで面識のなかった6人が集められた。しかし、どこかで情報が漏れていたため警官に待ち伏せされ強盗は失敗に終わる。情報を漏らしたのは誰か? 疑心暗鬼になった犯人たちのその後の行動と、主要人物の事件前の行動を織り交ぜながらストーリーは展開していく。
クエンティン・タランティーノの名を世界中に知らしめた作品。オープニング、マドンナの“ライク・ア・ヴァージン”談義は日本人の小生にはちょっとつらい。また、かなり時間をかけている割に、強盗関係者8人の性格を端的に描き出せているとは言いがたい。Mr.ピンク(スティーブ・ブシェミ)がチップに関する意見を言うくだりは人物紹介としてよいと思うが、ジョーの手帳は何を表していたのかわからない。マドンナの話題を含めて無駄が多かったように思う。しかし、店を出て仕事に向かうメンバーの後姿にタイトルが出るシーンは、音楽も効果的でなんともカッコいい。そして、次のカットでは車の後部座席のMr.オレンジ(ティム・ロス)が観客の度肝を抜く。運転しているMr.ホワイト(ハーヴェイ・カイテル)とのやり取りもうまい。映像が比較的単調なのがマイナス要素だが、その後の展開も面白い。時間を前後させることで、謎解きを盛り上げることにも成功している。
もっとも効果的だったのは「見せない」という演出。予算の少なさからか、宝石強盗のシーンはない。しかし、強盗シーンのないことがその後の展開をよりスリリングにしている。さらに、有名な耳のシーンもその瞬間を見せなかったことが衝撃的な場面を作る結果になったと思う。


ナイロビの蜂
   The Constant Gardener
2007年6月11日 
監督:フェルナンド・メイレレス
主演:レイフ・ファインズ
    レイチェル・ワイズ

        
        
イギリス外務省のジャスティン(レイフ・ファインズ)は妻のテッサ(レイチェル・ワイズ)とともに勤務地であるケニアのナイロビで生活していた。ジャスティンはガーデニングが趣味の地味な男、一方テッサは正義感が強く慈善活動に積極的に取り組んでいた。ところが、テッサは活動のために出かけたトゥルカナ湖で何者かに殺されてしまう。妻の死に対する警察の発表に納得がいかないジャスティンは自ら調査を始めるのだが……。
オープニングのトゥルカナ湖の映像でドキッとさせられ、手持ちカメラを多用したスリリングな映像にぐいぐい引き込まれた作品。監督のフェルナンド・メイレレスのセンスが光りまくっている。また、事件現場であるトゥルカナ湖のシーンを最初に持ってきて、その後でジャスティンとテッサの出会いの時に遡る脚本もよい。オープニングを印象深いものにするためには、トゥルカナ湖の映像が最適であった。見せる映画という印象を与えてくれる。人物の描き方もエピソードを通して性格や人柄をうまく表していて好感が持てる。2人の出会いの場面では、スピーチをうまくやろうとは思っていないジャスティンと、自分の考えをぶつけずにはいられないテッサが1つのエピソードによって観客に紹介される。そして、会場にいた人たちがいなくなってしまうことは、その後の2人を暗示している。
ただ、結末はいかがなものだろうか? 美しく終わればよいのだろうか?


16ブロック
   16 Blocks
2007年6月4日 
監督:リチャード・ドナー
主演:ブルース・ウィリス
    モス・デフ

        
        
ニューヨーク市警の刑事ジャック・モーズリー(ブルース・ウィリス)は、足の負傷のため第一線を退き、勤務中にも酒を飲む体たらくだった。ある日16ブロック離れた裁判所まで証人エディ・バンカー(モス・デフ)を送り届ける仕事を引き受けたが、車で護送中ジャックが酒屋へ立ち寄った隙にエディが何者かに襲われる。エディを助け、知り合いの店に避難したジャックのところへやってきた同僚のフランク(デヴィッド・モース)のとった行動は……。
ブルース・ウィリスに驚いた作品。最初に現れた際、今までの印象がまったくなかった。浮名を流していたころのギラギラした感じがないだけでなく、しょぼくれた感じが漂ったイイおっさんになっていた。見事な役作りである。そんな男が襲われたエディを助けるために銃を撃つ場面はなかなかカッコいい。この辺までは文句なかった。
ところが、その後のさまざまな場面は盛り上げることだけが目的でまったく統一性がない。ドキドキさせるシーンはそれなりに面白いが、どこかで見たような気のするものが多かった。ちょっとしたエピソードの積み重ねにしないで大きな事件をじっくり描いてほしかった。バスのエピソードにしても、あれだけの展開にしておきながらあっけないまとめ方だった。サスペンスとヒューマンドラマを織り交ぜたいのだろうが、どちらも中途半端になってしまった。


ブラック・ダリア
   The Black Dahlia
2007年5月21日 
監督:ブライアン・デ・パルマ
主演:ジョシュ・ハートネット
    スカーレット・ヨハンソン

        
        
ロサンゼルスの警官バッキー・ブライカート(ジョシュ・ハートネット)とリー・ブランチャード(アーロン・エッカート)は、口を耳まで裂かれたうえに腰の部分で身体を2つに切断された女性エリザベス・ショート(ミア・カーシュナー)の事件を担当することになる。捜査を進めていくなかでバッキーはマデリン・リンスコット(ヒラリー・スワンク)と知り合うのだが……。
TVコマーシャルのイメージから、“キャリー”や“殺しのドレス”のようなショッキングなシーンが満載で、スリルあふれる作品を想像していた小生にはちょっと期待はずれの作品。デ・パルマらしさはいたるところにあってそれなりに満足はできたが、ストーリーが複雑なために映像中心の語り口に無理があったように思う。終盤のフラッシュバックによる説明などのいかにもデ・パルマらしい展開も、説明しなければいけない内容が多すぎてわかりにくい。いくつかエピソードを減らして単純な筋書きにしたほうがサスペンスを楽しめる作品になると思うのだが、最近の脚本は複雑でなければいけないと言わんばかりに、これでもかと事件を重ねていく。ジェームズ・エルロイの原作があるため仕方がないのか。それでも最近では長い部類に入る2時間の作品なのだから……。
アルフレッド・ヒッチコックへのオマージュを作品のいたるところに見せるデ・パルマ。この作品で目立ったのは“めまい”。自分と似ているエリザベス・ショートに強い関心を持ったマデリン・リンスコットの名は“めまい”でキム・ノヴァクが演じたマデリン・エルスターからだろう。バッキーが四角い階段を登っていく場面は“めまい”の教会の塔でのシチュエーションによく似ている。主人公が階段の途中にいて真実を見られないところなどそっくりである。また、スカーレット・ヨハンソンをキム・ノヴァクを彷彿とさせるように撮っていると思う。
いわゆるデ・パルマ・カットでは、エリザベス・ショートの死体が発見される場面がすばらしかった。建物の後ろで叫びながら走る女性をカメラが追い、そのまま建物の前の車の中で張り込みをしているバッキーとリーを見せていく。位置関係をはっきりさせるためにワンカットでの撮影はとても効果的である。その後建物の前では銃撃戦が始まり、観客が建物の後ろの出来事を忘れたころに、2階の窓越しに死体発見現場を見せる。見事としか言いようがない。しかし、バッキーがマデリンに家族を紹介される場面の主観移動カメラはあまりにも唐突だし、この場面で使った意味もよくわからない。無理して自分の色を出そうとしているように思えて、おもわず苦笑してしまった。それでもファンである自分がこういう多少はずした演出を期待していることは否定できない。そう考えるとファン思いの監督なのだろうか。
そういえば、ウィリアム・フィンレイは“フューリー”できれいな顔だったのに、またファントムの顔になってしまった。


ヒストリー・オブ・バイオレンス
   A History of Violence
2007年4月23日 
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
主演:ヴィゴ・モーテンセン
    マリア・ベロ


        
ダイナーの経営者であるトム・ストール(ヴィゴ・モーテンセン)は、自分の店が2人組の強盗に襲われた際、素人とは思えない動きで強盗を倒し、ヒーローとしてマスコミに取り上げられる。おかげで店は繁盛するが、トムをジョーイと信じて疑わない顔に傷を持った男フォガティ(エド・ハリス)が現れ、家族に付きまとうようになる。フォガティの言葉で妻のエディ(マリア・ベロ)はトムに対して不審を抱くようになり……。
デヴィッド・クローネンバーグというと“ヴィデオ・ドローム”や“ザ・フライ”の異様な世界を真っ先に思い出してしまうのだが、この作品は今までのイメージが一変してしまう作品。幸せな家族の中に突然暴力とそれによる脅しをきっかけにして亀裂が入っていくようすを上手に撮っている。子ども2人がいない間の夫婦の幸せなひと時の描き方が大胆なだけに、夫に対して疑心暗鬼になる妻の葛藤が引き立つ。息子であるジャック(アシュトン・ホームズ)の存在も面白い。この作品のなかでは2通りの暴力が描かれていると思うが、ジャックの暴力とトムが店で見せた暴力は、他のものと異なっている。ジャックは学校で暴力を振るい、フォガティに向けてショットガンを撃つ。しかし、トムが店を守るために戦ったときと同様に、観客のほとんどはその行為を非難しないだろう。途中までは物凄く深みのある作品だと感心しながら見た。
トムはリッチー(ウィリアム・ハート)に会いに行く。その部分がいただけない。違う作品になってしまった。ラストはうまいと思うが。


カサノバ
   Casanova
2007年4月16日 
監督:ラッセ・ハルストレム
主演:ヒース・レジャー
    シエナ・ミラー


        
18世紀、教会の力が政治に及んでいたころのヴェネチアで、プレイボーイとして名を馳せたジャコモ・カサノバ(ヒース・レジャー)が本当の恋に目覚めるという内容をコメディタッチで描いた作品。
作品の随所に伏線が張り巡らされ、後半で見事にまとまっていくところが気に入った作品。オープニングの年老いたカサノバのモノローグでさえ伏線だったのにはびっくりしたが、それ以外にもカサノバの母の一言、一夜をともにした修道女、気球の模型、決闘の場面など、前半のさまざまな部分が後半で活きてくる。うまい脚本である。
もうひとつ気に入ったのが、この作品の第2のテーマと言ってよいであろう「他人になりすます」ところ。カサノバを筆頭に、フランチェスカ(シエナ・ミラー)と彼女の弟、カサノバの母とその夫、みんな他人になりすます。特にフランチェスカは作品中4人の人物になりすます(うち3人はすぐに正体がわかるが)。そしてエンディングから考えるとこの後もカサノバはさまざまな人物になりすますことになる。うまい脚本である。
“カサノバ”というとエッチな作品か暗い作品を連想しがちだが、この作品は全くちがい、肩の力を抜いて見られる娯楽作である。宣伝の仕方がまずいのではないか? ストーリーにもう少しアッと言わせるものがあれば本当に楽しめる作品だと思う。


列車に乗った男
   L' Homme du Train
2007年4月12日 
監督:パトリス・ルコント
主演:ジャン・ロシュフォール
    ジョニー・アリディ


        
英語教師としての職を勤め上げ退屈な毎日を過ごしていたマネスキエ(ジャン・ロシュフォール)は、心臓の薬を買いに行った際にミラン(ジョニー・アリディ)と出会う。列車でその街にやってきたミランはホテルが休業中だったためにマネスキエの家に泊まることになる。お互い人生に不満を持っていた2人は自分にない部分を持つ相手に少しずつ惹かれはじめていくが……。
2人の男をそれほど多くない台詞で見事に表現している。台詞が多くない代わりに、視覚的な工夫はたくさんある。特に、アウトローのミランのシーンは青を基調とした画面にし、模範的な教師であったであろうマネスキエのシーンは暖色系を基調とした画面にすることによる2人の対比はとても効果的である。また、銃やパイプ、詩集、ピアノといった小道具によってお互いの生活に憧れていることを表しているところもうまい。とにかく、ごちゃごちゃ語り過ぎないし、見せ方もしつこくないところに好感が持てる。
ユーモラスな部分も決して無駄でない。革ジャンを着てみたマネスキエがワイアット・アープの真似をする場面はマネスキエという人物の紹介として有効だし、「ほかには?」と必ず聞くパン屋の場面はミランの心情をさりげなく伝えている。ミランはさぞ失望したことだろう。そして極めつけは、マネスキエのこの台詞。「最悪はシューマンのだ、弾く気にはならん。ショパンは許せる。質問した相手に、キツい答えを返されても、気にしないタイプ。シューマンは、泣き言をぐずぐず言い、同じ事を繰り返す。だが、私は弱者が好きな、シューマン派だ。」


暗黒街の弾痕
   You Only Live Once
2007年4月2日 
監督:フリッツ・ラング
主演:ヘンリー・フォンダ
    シルヴィア・シドニー


        
エディ(ヘンリー・フォンダ)は囚人であったが、弁護士事務所で働くジョー(シルヴィア・シドニー)に惹かれ、出所後すぐに結婚する。ジョーとの幸せな家庭を築くためにエディはまじめに働く決心をし、トラック運転手となる。しかし、前科者であるエディへの周囲の風当たりは強く、少しの遅れが原因でクビになってしまう。そんなとき銀行強盗が起こり現場にはエディの帽子が落ちていた。エディーとジョーの運命は……。
まるでギャング映画のようなタイトルだが、作品はかなりシビアな社会派の人間ドラマである。白黒ならではの陰影を巧みに使った演出がドラマをさらに盛り上げる。白昼の銀行強盗のシーンは特に素晴らしい。犯人を車の汚れた窓越しに撮ったカットと銀行前の道を見渡す位置からのカット、途中に入るエディの帽子のアップ、そして爆発。白煙がもうもうと立ち込めるシーンは衝撃的であると同時に美しい。また、対照的に脱獄シーンは夜で、暗闇の中の光の使い方が見事である。もちろんどちらのシーンもスリリングで、映像が先走りしているようなことはない。さらりと見せているようだが、しっかりとした計算のうえでのカットだと思う。
ヒロインのジョーの描き方もうまいし、魅力的に撮っている。シルヴィア・シドニーの演技力もあるのだろうが、彼女の表情を追っていくだけでも十分に楽しめる。やはりうまい監督は女優の撮り方やクライマックスの演出に一味違うところがある。


君とボクの虹色の世界
   Me and You and Everyone We Know
2007年3月19日 
監督:ミランダ・ジュライ
主演:ミランダ・ジュライ
    ジョン・ホークス


        
高齢者用タクシーの運転手であるクリスティーン(ミランダ・ジュライ)は、現代アートでの成功を夢見る個性的な女性。ある日、タクシーの常連客の老人と行ったショッピングモールで、靴売り場の店員リチャード(ジョン・ホークス)に一目惚れする。一方、リチャードもクリスティーンに惹かれるが、彼は離婚したばかりで、一緒に暮らすことになった2人の息子とのコミュニケーションに頭を悩ませている。さて、クリスティーンとリチャードは?
女性監督らしい感性で描いたヒューマン・コメディ。もうちょっと極端にするとただの変人になってしまうところを、ぎりぎりのところで抑えた登場人物たちと、随所に出てくる独特のユーモアがうまく絡み合って面白い仕上がりになっている。リチャードが子どもの気を引こうとして自分の手にライターオイルをかけて火をつける場面は、観客を驚かすだけでなく、リチャードの性格や子どもに対する愛情も描き出していてうまい。
リチャードの2人の息子がチャットをしている場面も面白い。特に、字を読めるのだがまだ書けない6歳の子がコピペでチャットをしてしまうところは、下手なサスペンス映画よりずっとスリリングである。
  ))<>((


プルートで朝食を
   Breakfast on Pluto
2007年3月12日 
監督:ニール・ジョーダン
主演:キリアン・マーフィ
    リーアム・ニーソン


        
IRAのテロ活動が活発だったころのアイルランドで、教会の前に捨てられていたパトリック・ブレイドン(キリアン・マーフィ)は、教会の近くのブレイドン家で育てられる。しかしパトリックには女装癖があり、周囲の目を気にするブレイドン家に居づらくなっていく。自分が孤児であることを知ったパトリックは自分を捨てた母を捜すために家出をしロンドンへと向かうが……。
主人公も風変わりだが、周囲の人物も皆どこか変わっている。しかし、恋人チャーリー(ルース・ネッガ)のためにテロ活動の計画をしゃべってしまう革命家(かぶれ?)のアーウィン(ローレンス・キンラン)、自分がかつて逮捕したパトリックのために仕事を世話してやる警察官(イアン・ハート)というように、ちょっと変でも根は優しい人物ばかり。(ただ1人、そうでなかった人物を演じたのがブライアン・フェリーだったのにはびっくりした。そういえば前回の“ジャケット”の音楽がブライアン・イーノでした。)そんな優しい人物たちはそれぞれパトリックを物理的に支援してくれる。生活の場は与えてくれる。ところが、パトリックはそのほとんどの場所に精神的な拠りどころを見つけることができない。みんな“serious”!!
手品師のバーティ・ヴォーン(スティーヴン・レイ)から告白される桟橋のシーンや、パトリックがバスで故郷に帰ってくるシーンなどカッコいい映像もちらちらとあり、なかなかよい作品だった。


ジャケット
   The Jacket
2007年3月4日  
監督:ジョン・メイバリー
主演:エイドリアン・ブロディ
    キーラ・ナイトレイ


        
1991年に湾岸戦争で頭を撃たれて記憶障害という後遺症が残ったジャック・スタークス(エイドリアン・ブロディ)は、翌年、殺人事件に巻き込まれるが、記憶がはっきりしないために逮捕され精神病院へと送られる。病院でジャックは矯正のための治療として拘束衣(ジャケット)を着せられ死体安置用(?)の引き出しに入れられる。ところが、その治療中に15年後の世界へとタイムスリップしてしまい、自分が1993年1月1日に死亡したということを知る。真相を突き止めようとするジャックだったが……。
宣伝用の写真などから内容はサスペンス・ホラーかと思っていたが、ストーリーにホラー的な要素はなく、後半は恋愛ものといってもよいくらいだった。前半は暗いイメージが続く中で、過去の記憶が蘇る場面など目が痛くなるような映像がところどころに出てきたり、夜の病院を正面から思わせぶりに撮ったカットが何度か出てきたりして、好きではない。作品全体のテーマを考えると前半の雰囲気作りは少しやりすぎではないか? それでも、無駄のない脚本で(いくつか突っ込みたくなる場面があるが)うまくまとめていると思う。終わり方もよい。
音楽がブライアン・イーノだということを知ってびっくりしたが、患者仲間のルーディー・マッケンジーを演じたダニエル・クレイグのおっさんぶりにもびっくりした。


リバティーン
   The Libertine
2007年2月22日  
監督:ローレンス・ダンモア
主演:ジョニー・デップ
    サマンサ・モートン


        
17世紀中頃、イギリスの国王チャールズ二世(ジョン・マルコヴィッチ)の恩赦でロンドンに戻ってきた詩人のロチェスター伯爵(ジョニー・デップ)は、かつて卑猥な詩を朗読して国王の怒りを買ったにもかかわらず、その行動に全く変化が見られない。国王からは才能を認められているのだが、悪友との放蕩三昧が続く。そして……。
イギリスが舞台で、破滅型の主人公の物語だからか、映像は全体的に暗くて粗い。地面は常にぬかるんでいて、日の光は一度も見られない。冒頭のモノローグ後、国王が緑の芝の上を歩いてくる場面は綺麗だったが、その後は劇場の場面も含めて重苦しい映像が最後まで続く。開放感がない。作品の雰囲気作りのために仕方がないのか? 見ている側はずっと作品に閉じ込められているように感じてしまうのだが。
この作品は「諸君は私のことを好きになるまい」というロチェスター伯爵の自虐的なモノローグから始まる。そして、作品に描かれたロチェスター伯爵は、まわりの者が自分を嫌うように仕向けることで、自分にかかるプレッシャーから逃れようとしているかのようだった。思い切り虚勢を張っているひとりの弱い人間がいたように思えた。それと同時に身近な者に対する配慮をしっかりしていて、彼のために本当の意味で不幸になった人物はいなかった。妻エリザベス・マレット(ロザムンド・パイク)にしても、最愛の夫ロチェスター伯爵の最期の言葉で救われたはずである。無茶はするが実はいい人の一代記といったところだろうか。
脚本はよかったと思う。映像には不満が残る。


レイヤー・ケーキ
   Layer Cake
2007年2月14日  
監督:マシュー・ヴォーン
主演:ダニエル・クレイグ
    ジョージ・ハリス


        
ロンドンの麻薬ディーラーXXXX(ダニエル・クレイグ)は、堅実な商売でその地位を固めていくが、同時に引退も考えている。そんなときボスのジミー・プライス(ケネス・クラナム)から依頼された仕事は彼を危機的な状況に陥らせるものだった。
ハリウッドものとは一味違うサスペンス作品。悩める主人公の顔は、こういった役ですぐに思い浮かぶアル・パチーノが演じるような激しい苦悩の表情ではなく、感情を抑えたイギリス人らしい表情で個人的には好きである(ジェームズ・ボンドというイメージではないような気がするが、6代目だそうで……)。しかし、そんな主人公が下っ端のシドニー(ベン・ウィショー)の彼女であるタミー(シエナ・ミラー)に一目惚れしてしまうなんて、ちょっと無理があるのでは? タミーは中盤から全く登場しなくなるので、女っ気の少ない作品に綺麗どころを出して一息つかせようという意図だと思っていたら、最後で結構重要な役どころになっていた。無理してラストを洒落た感じにひねり出したという印象を持った。DVDでは別エンディングも見ることができるが、どれもとってつけたような感じで……。最近のDVDでは別エンディングを特典として入れているものが時々あるが、製作者は自信を持って1つの作品を見せてほしいものである。
あるモノにカメラが寄っていってアップにし、カメラが引いていくと次の場面になっているというような細かい部分へのこだわりには好感が持てるし全体のトーンも好みなのだが、中だるみしてしまう感があるのとエンディングの後味の悪さが全体の評価を落とした作品だった。


インサイド・マン
   Inside Man
2007年2月6日  
監督:スパイク・リー
主演:デンゼル・ワシントン
    クライヴ・オーウェン


        
マンハッタンにある信託銀行を襲ったダルトン・ラッセル(クライヴ・オーウェン)率いる犯行グループは、人質をとって銀行内に立てこもった。人質も自分たちも皆、用意してきたフード付きの同じ服になり、外見からは人質と犯人の区別がつかないようにする。犯人との交渉担当になったキース・フレイジャー(デンゼル・ワシントン)は徐々に犯人の狡猾さに気づいていくが……。
とても考えて書かれた脚本であると思うのだが、サスペンスの盛り上がりをうまく作り上げられなかった作品。銀行強盗たちが襲撃を行う以前の出来事の詳細は描かれないのだから、立てこもり事件そのものの緊張感や、それに関係した人物たちの姿を描きたかったのだろうが、作品内の事件の膠着状態が作品そのものも膠着させてしまったような気がする。そのわりにラストはテンポよく展開し、途中をちゃんと見ていなかった者は置いてきぼりを食らうという感じになっている。また、登場人物の会話の端々に出てくるユーモラスな表現が楽しませてくれる。そんな会話もデンゼル・ワシントン、クライヴ・オーウェン、ジョディ・フォスター、ウィレム・デフォー、クリストファー・プラマーといった役者たちが演じているから楽しめるのは当たり前なのか?
犯人たちの行動に怒りを感じたフレイジャーが銀行の正面玄関まで走っていく(?)場面の撮り方は、あれが効果的だと思ったのだろうか? だとしたら、スパイク・リーのセンスをちょっと疑ってしまうのだが。


誰かに見られてる
   Someone to Watch over Me
2007年1月27日  
監督:リドリー・スコット
主演:トム・ベレンジャー
    ミミ・ロジャース


        
友人が殺されるところを目撃してしまった大金持ちのクレア(ミミ・ロジャース)と、逃走した犯人からクレアを護衛することになった刑事のマイク・キーガン(トム・ベレンジャー)は、次第に惹かれあっていく。しかし、クレアには恋人がいて、マイクには妻子がいる。さて、二人の関係はいかに?
オープニングのニューヨークの夜景のバックに流れるスティングの“Someone to Watch over Me”がなんともカッコよい。リドリー・スコットのセンスのよさが感じられる。この曲が劇中にも使われ、エンドロールでも流れる。しかもすべて違うバージョンで、エンドロールのものはロバータ・フラック。ジーンとくる。映像も、押さえ気味ではあるがリドリー・スコットらしい暗さがいい味を出している。これでストーリーがもっと面白ければ……。
タイトルのとおり、ベンザ(アンドレアス・カトスラス)は殺人現場をクレアに見られ、クレアは護衛の警官に私生活を見られ、クレアとマイクはパトカーの警官に仲の良いところを見られ、ベンザに狙われたマイクとその家族はベンザに……。というように凝った脚本ではあるのだが、サスペンスはそれほど盛り上がらないし、ロマンスも今ひとつ共感できない。クレアの家での銃撃シーンはオーソン・ウェルズの「上海から来た女」の足元にも及ばない。マイクの妻エリーを演じたロレイン・ブラッコはよかったが。


デッドマン
   Dead Man
2007年1月21日  
監督:ジム・ジャームッシュ
主演:ジョニー・デップ
    ゲイリー・ファーマー


        
クリーヴランドから西部の町マシーンにやってきたウィリアム・ブレイク(ジョニー・デップ)は、町の有力者ディッキンソン(ロバート・ミッチャム)の息子を殺してしまい、ディッキンソンの雇った殺し屋に追われることとなる。そして、撃たれて怪我をしたウィリアムの手当てをしたインディアンのノーバディ(ゲイリー・ファーマー)との不思議な旅が始まる。
生と死というテーマに、白黒の美しい映像とニール・ヤングのギター(映像にあわせて即興で弾いたらしい)を用いて独特な雰囲気を加えた作品。特に表情を作っているわけでもないのに何かを内に秘めているように見えるジョニー・デップをうまく使っている。脇を固めたジョン・ハート、アルフレッド・モリナらもよかった。
ウィリアムは生きていたかった。だから逃げた。ノーバディはそうは考えない。二人の間には微妙なずれがあるのだが、いつの間にか何かで結びつく。そういった展開の中での二人の会話はある意味スリリングである。生にこだわるウィリアムは自分の生のために他の者の生を犠牲にしていくことになる。ウィリアムは精神的にたくましくなっていく。しかし、小鹿の死体と添い寝する場面が象徴しているように、自分以外の生にも思いをはせる。
テーマはとても高尚なものであるように感じられるが、ジャームッシュはそこに一風変わったスパイスで味付けをする。ノーバディは女性と寝ていて逃げられるし、殺し屋は死体の頭部を踏み潰す。なんとも不思議な世界である。


ダ・ヴィンチ・コード
   The Da Vinci Code
2007年1月15日  
監督:ロン・ハワード
主演:トム・ハンクス
    オドレイ・トトゥ


        
学者のロバート・ラングドン(トム・ハンクス)は、ルーブル美術館で殺害された館長のジャック・ソニエール(ジャン=ピエール・マリエール)の残した謎を解くため、館長の娘で暗号解読官のソフィー・ヌヴー(オドレイ・トトゥ)とともに行動することになるが……。
原作の面白さが見事に失われてしまった作品。小説でのこの作品の魅力は謎解きの面白さである。小説であれば登場人物と一緒に謎解きを楽しむことができ、随所に出てくる暗号などを立ち止まって考えることができる。しかし、映画ではやはり無理。展開の中でいろいろな手がかりがチラッと提示されるだけで、考える余裕など決して与えてくれない。原作を知らない人には、なんだかよくわからないものを追いかけている下手くそなサスペンスとしか思えないのではないだろうか。原作を読んでいても少し無理がある展開ではないかと感じたくらいだから。
トム・ハンクスは無難に演じたという感があるが、オドレイ・トトゥはミスキャスト。オドレイ・トトゥは表情の豊かさが売りの役者のように思う。眉間にしわを寄せた顔ばかりでは彼女の魅力が全然出ない。シラスを演じたポール・ベタニーもやりすぎという感じがする。映像は面白いところ(特にラスト)があるだけにちょっと残念。


映画への独り言